グローバルな採用には多くのメリットがあり、最高の才能をあなたの会社にもたらすチャンスです。ブラジルは、その中でも最高クラスの才能を提供する国の一つです。アウトソーシング国ランキング30以内に位置しています。
しかし、ブラジルからの採用を決めた場合、ブラジルの給与体系と税制について理解しておく必要があります。あなたとあなたの従業員の双方が税務上の影響を理解することは非常に重要であり、税金はあなたと従業員の間で分担されています。
ブラジルでは、給与税務について理解し管理する責任は雇用主にあります。正確な計算を行い、適時に支払う必要があります。また、他の関係法規も遵守しなければなりません。違反すると高額な罰金や料金が科せられる恐れがあります。
一方、従業員も給与や税制の法的要件について理解しておくことが重要です。関連する税務権利と雇用主の義務を把握することで、公正な賃金を受け取っていることを確実にできます。
ブラジルの給与税制の概要
ブラジルの給与税制は、雇用主と従業員の両方からさまざまな税金や拠出金が課される仕組みです。これには、社会保障拠出金(INSS)、所得税源 withholding(IRRF)、FGTS拠出金、PIS/PASEP拠出金などが含まれます。
これらの主要な税金について詳しく見てみましょう。
社会保障拠出金(INSS)
ブラジルの社会保障拠出金は、広範囲な給付をカバーします。これには、医療保険や年金保険、障害・失業手当が含まれます。また、妊娠・育児休暇、場合によっては死亡保険もカバーしています。具体的な給付内容は、支払った拠出金の種類に依存します。
これらの拠出金は、ブラジルでの雇用主にとって義務です。従業員も一部負担します。現時点で、従業員の拠出率は平均で総給与の8%です。雇用主としては、従業員の総給与の20%〜28.8%を拠出する義務があります。
これらの拠出金は複数の要因によって変動します。会社が属する業界、企業の規模も拠出金額に影響します。政府は定期的に制度を見直し、拠出率を変更することもあるため、最新の規則に注意しておく必要があります。
所得税源 withholding(IRRF)
IRRFは、ブラジルの所得税です。これは所得の源泉徴収により差し引かれます。従業員の給与またはその他の収入から税金を直接差し引く仕組みです。累進税率が適用されており、従業員の所得が高いほど、差し引かれる税率も高くなります。
雇用主向けIRRF
ブラジルで従業員を採用する際には、所得税源 withholding(IRRF)を管理する必要があります。あなたは、従業員の給与やその他の収入からIRRFを差し引く責任があります。
税金が差し引かれた後、その金額は規定の期間内にブラジルの税務当局(Receita Federal)に送付しなければなりません。また、従業員に対して差し引いたIRRFの詳細も提供します。これは、従業員の月次や年次の給与明細に記載される情報です。
さらに、IRRFに関する年間申告も必要です。これは、年内に差し引き、税務当局に送付したIRRFの合計金額を報告するものです。正確な計算は非常に重要であり、従業員の所得や適用される税率に基づき正確に算出する必要があります。
また、良好な記録管理も不可欠です。これによりIRRFの差し引きと支払いを追跡できます。税務計画の戦略も検討でき、全体の税負担を軽減することも可能です。税務の専門家は、従業員の福利厚生の最適化や控除の活用に関してアドバイスを提供します。複雑な状況では彼らの助けが非常に役立ちます。
従業員向けIRRF
従業員にとって、IRRFは収入から直接差し引かれるため、自ら税金を支払う必要はありません。前述したように、IRRFの税率は所得が増えるほど高くなる累進制度です。
IRRFは源泉徴収されるものの、従業員には年次の所得税申告も必要です。また、扶養控除や医療費、教育費などの控除を申請して課税所得を減らすことも可能です。
税率や税区分は毎年変動するため、最新情報はブラジルの税務当局から確認することが重要です。
FGTS拠出金
FGTS(Fundo de Garantia do Tempo de Serviço)は、日本語では「勤続保障基金」と呼ばれ、ブラジルの社会保障基金です。従業員が失業した場合に備えるための制度です。すべての従業員に義務付けられており、あなたと従業員の両方が拠出します。
この基金は政府によって管理され、さまざまな給付を提供しています。従業員が仕事を失った場合、FGTSの資金を取り出して生活費に充てることができます。また、退職時や緊急時にも利用されることがあります。
FGTSの拠出率は一般的に月収の8%です。あなたはこれらの拠出金の控除と拠出を行う責任があります。雇用主は定期的に資金をFGTS口座に入金しなければなりません。
PIS/PASEP拠出金
PIS(Programa de Integração Social)とPASEP(Programa de Amparo ao Trabalhador)は、ブラジルの社会保障プログラムであり、労働者にさまざまな恩恵を提供します。これらの拠出金は、多くの従業員に対して義務付けられており、雇用主は従業員の給与から一定分を差し引いて拠出します。
PIS/PASEPは、対象となる労働者に年間の給与ボーナスを支給し、収入を補助します。さらに、失業した場合の失業手当も受け取れることがあります。これらの拠出金は、退職後の給付金などのためにも利用されます。
対象となる条件は、正式な雇用関係にあり、一定の拠出要件を満たすことが一般的です。所得金額も影響します。働く間の支援と経済的安全性の向上を目的とした制度です。
PIS/PASEPの拠出率は、通常、月額給与の約1%です。あなたはこれを控除し、適切な政府基金に送金する責任があります。
ブラジルの給与税制の利点
ブラジルの給与税制には、雇用主と従業員双方にメリットがあります。主な利点はコスト削減です。特定のビジネス経費を控除でき、長期的には総税負担の削減に繋がります。
従業員もこのシステムの恩恵を受けます。医療保険や退職金拠出金の税控除が可能です。これにより、必要なサービスのコストを抑え、将来に備える貯蓄計画が立てやすくなります。
さらに、給与税から徴収される資金は、政府の歳入の重要な部分を占めており、医療や教育などの公共サービスの資金源となります。これにより、これらのサービスが確保され、全ての市民に提供されます。ブラジルは、これらの税金で資金提供される普遍的な医療制度を持つ数少ない国の一つです。
このシステムは、正確な給与報告を求めることで遵守を促進します。報告の透明性と信頼性の維持に寄与し、進歩的税率により高所得者はより多く支払い、低所得者はより多くの恩恵を受ける制度となります。
また、企業に対する補助金やインセンティブも利用可能です。投資や雇用創出を促進する補助金があり、経済成長を促します。さらに、外国企業向けの規則簡素化も進められ、ブラジルでの事業運営を容易にしています。
ブラジルの給与税制の短所
その一方、ブラジルの給与税制には短所もあります。一番の問題は複雑さです。さまざまな税金や拠出金を管理するのは難しく、多大な時間と資源を要します。特に小規模事業者にとっては大きな負担となることがあります。
もう一つの欠点は、コスト負担の高さです。雇用主は給与税により高額なコストを負担し、財務的な圧迫を受ける可能性があります。従業員も税金による純収入の減少を経験し、手取り額に影響します。高い給与税は、収入の少ない労働者にとって経済的な困難をもたらすこともあります。
また、制度の複雑さは、計算や報告のミスリスクを高め、結果として罰金やペナルティにつながるため、プレッシャーとなります。正確な遵守を続けるのは常に難しい課題です。
もう一つの問題は、税金の使途に関する透明性の欠如です。給与税の収入やそれの使われ方が不明瞭であり、公共サービスの有効性に疑問を持つことがあります。
ブラジルのeSocial導入(2019年)
2019年に、ブラジルはeSocialというデジタルプラットフォームを導入しました。これは、労働、社会保障、税務情報の報告を簡素化し、効率化を図るための仕組みです。書類作成の手間を削減し、労働と税務の規則遵守を支援します。
eSocialの大きな利点は、報告作業の効率化です。リアルタイムでのフィードバックや審査を行い、従業員に関する情報の整合性も向上させます。
雇用主としては、このeSocialを理解し順守することが、税務申告の迅速化と簡素化に大きく貢献します。
給与税の計算方法
ブラジルから人材を採用する際には、給与税の正確な計算方法を理解することが重要です。これにより、税務遵守を確実にし、罰則を回避できます。
給与税計算のステップと必要な税金の内容について詳しく見ていきましょう。
計算の手順:
ブラジルの給与税は、まず各従業員の総給与を決定することから始まります。ボーナス、残業、休暇手当、解雇手当も課税対象となるため、すべての関連収入を計算に含める必要があります。そこから、社会保障や所得税などの控除を行います。
これらの控除を差し引いた後、適用される税率を掛けて最終的な税額を算出します。これにより、ブラジルの規則に従った正確な税額の計算が可能です。
支払い期限:
雇用主は、課税期間終了後15日以内にすべての給与税を支払う義務があります。これにより、税務の遅延や違反による罰則を避けることができます。
遵守と報告
ブラジルで従業員を雇用する際には、給与税の規則を遵守し、定期的な報告と期限厳守を行うことが求められます。適切な報告は、法的要件の充足と税務当局とのトラブル回避に寄与します。
次に、重要な報告義務について解説します。
月次報告:
ブラジルの雇用主は毎月15日までに「Monthly Tax Declaration (DIRF)」を提出する必要があります。この報告には、支払った給与や源泉徴収した税金についての情報が含まれます。これにより、税務当局に最新の給与と税務状況を伝えます。
年次報告:
「Annual Social Information Report (RAIS)」は、毎年4月30日までに提出します。前年の給与総額や労働者の雇用状況等の詳細をまとめた報告書です。
外国人労働者の申告:
ブラジルで勤務する外国人労働者については、半年ごとに「外国人申告書(Foreigner Declaration)」の提出が必要です。これには、外国人の雇用状況や税務義務の情報が記載されます。
業界別のフォーム:
業種によっては、その他の申告書類も必要となる場合があります。特定の規制や税務考慮事項に対応するための書類です。
遵守違反と罰則
グローバルに採用を行う際の課題の一つは、遵守の維持です。税務義務を怠ると、重大な結果につながる可能性があります。これらの罰則と適時対応の重要性を理解し、コスト高のミスを避けることが不可欠です。
遅延支払い:
給与税の支払いを遅延した場合には、罰金と利息が科せられる可能性があります。遅延期間に応じて、利息は0%から6%まで変動します。重度の場合は、刑事告発にまで及ぶこともあります。
恩赦プログラム:
ブラジルの一部の州では、未払い税金を免除または軽減した罰則・利息で支払える恩赦プログラムを提供しています。条件は州によって異なるため、自分のビジネスが対象かどうか確認し条件を理解することが重要です。
期限厳守:
ペナルティを回避し、事業を守るためには、給与税の期限を厳守し、すべての支払いを遅延なく行うことが必要です。正確な記録保持とリマインダー設定が役立ちます。
節税計画の戦略
効果的な節税計画は、給与税の負担を減らし、節約を最大化します。財務管理と多様な税戦略の活用により、税負担を最小化し、経済状況を改善しましょう。
予算管理と控除:
綿密な予算策定と、利用できるすべての控除の活用が税負担軽減に役立ちます。給与経費に関連する全ての控除を把握し、最大限に利用してください。
インセンティブとクレジット:
ブラジルでは、連邦、州、市町村レベルのさまざまなインセンティブや控除制度があります。これらを調査して、全体の税負担を減らす機会を見つけましょう。
前払い制度:
INSSの料金を前払い方式で管理することにより、キャッシュフローを安定させ、コストを削減できる場合があります。効率的に管理できるプランを検討してください。
政府の支援プログラム:
研究・開発(R&D)などの活動に対する税額