Employer of Record Italy：現地法人を持たずにイタリアで採用

事業をイタリアに拡大することは、豊富な人材プールや新しい市場への扉を開きますが、同時に複雑な現地労働法や行政手続きのハードルも伴います。イタリアの雇用法は高度に規制されており、従業員に優しいことで知られており、集団交渉協定、民法典、そしてイタリア憲法に基づく規則が多数存在します。外国企業が現地子会社を設立する場合、商工会議所への登録、税番号の取得、社会保険（INPS）への登録など、多くの官庁手続きに従う必要があります。これらのプロセスは**時間がかかる（しばしば数ヶ月）うえに費用もかさみ、間違いがあれば法的なペナルティやオンボーディングの遅れにつながる可能性もあります。だからこそ、多くの企業はイタリアでの採用を効率化するためにEmployer of Record (EOR)**を利用しています。EORはあなたに代わり現地の雇用者として機能し、イタリア人従業員を素早くかつ合法的に採用できるようにします。本ガイドでは、EORとは何か、なぜイタリアでEORサービスを利用するのか、イタリアのEORが実際に行う業務、イタリアでの採用に関する主要な法的ポイント、そしてEORと現地法人設立との比較について説明します。また、RivermateのEORプラットフォームが人事担当者の皆さまがイタリアで従業員をスムーズにオンボーディング・管理できる方法もご紹介します。

Employer of Record（EOR）とは？

Employer of Record（EOR）は、あなたの従業員の法的雇用者となる第三者の組織であり、現地の雇用責任をすべて引き受けつつ、あなたは従業員の日常業務をコントロールします。言い換えれば、EORは対象国で従業員を書面上で雇用しますが、その従業員は実務上あなたの会社の従業員のままです。EORは、給与計算、税金の源泉徴収、社会保険料の納付、福利厚生の管理、労働法遵守などの雇用に関わる全ての法的責任を引き受けます。一方、あなたの会社は従業員のプロジェクトやパフォーマンス管理を従来通り行います。

イタリアの文脈では、EORは特にイタリア法人を持たない企業にとって非常に有用です。EORはすでにイタリアに法的な拠点（またはパートナー）を持っており、あなたに代わって即座にイタリア人スタッフを雇用できるためです。イタリアの子会社を設立したり、労働規制に精通する必要はありません。EORがイタリアでの人事・税務・法的手続きを一括して管理してくれるため、あなたはチームの管理と事業拡大に専念できるのです。要するに、EORモデルを採用すれば、通常必要となるコストや手間をかけずにイタリアの人材にアクセスできます。

なぜイタリアでEmployer of Recordを使うのか？

イタリアでの採用にEORサービスを利用することにはさまざまなメリットがあり、多くの国際企業の人事チームに支持されています。主な理由は次の通りです：

• 現地法人の設立を避けられる：最大の利点は、イタリアで会社を設立せずに採用を開始できることです。ローカルに法人を作る必要がないため、商工会議所やINPSに登録し、法人設立後に社員を雇う必要があった従来の方法に比べて、時間とコストを大幅に削減できます。EORはすでにインフラを整えているため、数日で採用を開始できるのに対し、法人設立には数ヶ月かかることもあります。
• 素早い市場展開：EORを使えば、イタリア人従業員のオンボーディングを迅速に行えるため、市場進出のスピードを大きく向上させられます。ライセンスや銀行口座の準備を待つ必要もなく、サイン後すぐに採用と給与支払いが可能です。このアジリティにより、イタリアのビジネスチャンスを遅滞なく掴むことができます。
• 現地の法令遵守の専門知識：イタリアの労働法や雇用慣行は複雑で、かつ変動も激しいです。EORの提供者はイタリアのHRコンプライアンスの専門家であり、全ての契約条件、給与控除、福利厚生が現地の要件を満たしていることを保証します。このローカル知識により、うっかり法令違反のリスクを軽減できます。イタリアの労働規則や団体交渉協約の詳細を理解しなくても、EORがすべて管理します。
• HR事務手続きの軽減：イタリアで必要な人事業務の多くをEORが代行します。給与計算、税務申告、社会保険料の納付、保険加入、給与明細発行や経費精算といったルーティンタスクも含まれます。自社の人事チームが外国の書類や現地専門家を雇う手間を省き、本来の人事業務に集中できます。
• 100％準拠＆リスクの軽減：信頼できるEORを利用すれば、イタリアでの採用は法令遵守が完全です。EORは、残業規則から育児休暇まで、労働法の最新動向を追い続け、それに基づく責任も負います。これにより、罰金や法的トラブルのリスクを大幅に減らせます。長期的な雇用や解雇においても、EORはちゃんとした法的根拠に基づき適切に対処してくれるため安心です。
• 小規模チームや試験運用にコスト効率的：イタリアへの進出をEOR経由で行えば、小規模な採用や市場テストには特にコスト効果があります。通常の法人設立費用に比べて、サービス料（従業員一人当たりの料金）をEORに支払うだけで済み、負担も少なくて済みます。少人数だけ採用したい場合や、短期的に市場テストをしたい企業に最適です。
• スケーリングの柔軟性：EORとの契約は非常に柔軟です。必要に応じてイタリアでのチームを拡大・縮小でき、現地法人を解散する必要もありません。事業状況の変化に応じて、簡単に従業員を増やしたり、サービスを停止したりできます。長期の物理的拠点や子会社を設立するよりも、迅速かつ柔軟に展開可能です。

全体的に、イタリアのEmployer of Recordはグローバル展開をただちに簡素化する手段です。官庁の煩雑な手続きを回避し、イタリア市場への足がかりを素早く、安全に築けます。イタリアの労働法に詳しい専門家になる必要はなく、EORにアウトソーシングして安心して採用できるのです。多くの企業にとってこれが、「遅れていた拡大を実現し、今すぐイタリアでトップクラスの人材を採用できるかどうか」の分かれ目となっています。

イタリアのEORは何を行う？

イタリアのEORは、あなたに代わり現地での雇用義務を全て担います。実務的には、EORはあなたのためにイタリアの“人事部”の役割を果たし、雇用した従業員に関するキー業務を担当します。具体的には以下の通りです：

• 採用とオンボーディング：EORはあなたが選んだ候補者を、現地のイタリアの法人を通じて正式に雇用します。必要に応じてイタリア語の労働契約書を作成し、職務内容、給与（ユーロ）、労働時間、試用期間、解除予告期間などの必須項目を盛り込みます。その際、イタリアの税番号（codice fiscale）、銀行口座情報、住所、必要書類を収集し、適宜イタリア当局へ登録します。これにより、従業員は法的に登録され、就労の準備完了です。
• 給与計算：EORは毎支払期間（通常月次）に給与計算を行います。総額から税引き後の純給与を確定させ、所得税や社会保険料を正確に差し引きます。イタリアの社会保険料は高く、給与の約30％を雇用者負担でINPSに納付し、従業員側も約9％が給与から控除されます。EORはこれらを計算・支払い、給与明細も適法に発行します。
• 税務申告・社会保険料納付：EORは所得税の源泉徴収や納付、INPS、場合によってはINAIL（労災保険）などの社会保険料の申告・支払いも全て代行します。毎月・年次の報告・納税を正確かつスケジュール通りに行い、あなたの会社がイタリアの税務当局や保険機関と良好な関係を維持できるようサポートします。
• 福利厚生の管理：EORは従業員にとって必要な法定福利や待遇を全て管理します。イタリアは労働者保護が充実しているため、最低4週間の有給休暇、12日程度の祝日、病欠休暇、育児休暇（約5ヶ月、80％給付）や父親休暇（10日間、給与支給）を保証します。さらに、「13ヶ月給与」や業界によっては「14ヶ月給与」も支給され、福利厚生の拡充も担います。この全てを法律や団体交渉協約に基づき適切に行います。
• 人事サポートと助言：良いEORは数字の管理だけではなく、継続的な人事相談も提供します。イタリアの雇用実務や文化的背景に関するアドバイス、職場の問題解決や従業員からの質問対応などを行い、雇用関係の円滑な運用を支援します。必要に応じて背景調査や健康診断の手配も行います。
• コンプライアンス監視：労働規制は変化しますが、EORは常に最新情報をキャッチアップし、イタリアの労働法改正や新しい規制に適応します。これにより、あなたは法令順守のための手間を省きつつ、常に合法的な運営を維持できます。
• 退職・離職の管理：社員の解雇や退職の際も、EORは適法に対応します。イタリアでは解雇が厳格なため、「正当な理由」や必要な手続きを確実に行う必要があります。適切な書類作成や最終給与計算（未使用休暇、TFR退職金の支払い）、解雇通知の送付まで一貫してサポートし、不法解雇リスクを抑えます。

総じて、イタリアのEmployer of Recordは採用から退職までのすべての雇用管理を一手に引き受けるサービスです。国際労務の専門家が、「従業員のオンボーディング」「給与・税金管理」「必要な法的書類の提出」「福利厚生の運用」「解雇手続き」まで包括的にサポート。また、あなたの会社は自分たちのプロジェクトや目標に集中でき、背景でEORが行政・法務のリスクを守ります。まさに、あなたのビジネスをイタリアの法制度から守る“盾”となります。

イタリアにおける法的・コンプライアンス上のポイント

イタリアの雇用に関する法律・規制はヨーロッパでも屈指の厳格さを誇ります。現地で採用する企業（直接雇用もEORを通じた雇用も）は、これらの法令遵守を意識する必要があります。特に重要なポイントは次のとおりです：

• 包括的な労働法規：イタリアの労働法は労働者に優しい内容で、従業員の権利を保護するために民法典や労働法規が整備されています。特定の業界には**団体交渉協約（CCNL）**があり、これが賃金や勤務時間、福利厚生の基準を定めています。EORはこれら協約の条件を反映した契約書を作成し、従業員に適用させます。
• 雇用契約の要件：イタリアでは、従業員には書面の労働契約書が望ましく、内容は理解しやすい言語（イタリア語が一般的）で記載されている必要があります。契約には職種、就業場所、開始日、期間（永続または有期）、勤務時間、給与、年間休暇、解雇予告、試用期間などを盛り込みます。口頭契約も可能ですが、書面化が推奨されます。EORはこれらの条件を満たした契約書を作成します。
• 就業時間と残業：標準労働時間は週40時間です。残業は認められていますが、平均48時間以内（数週間の平均）に抑える必要があります。また、EU規則に従い、少なくとも1日の休息時間や11時間の連続休息も確保しなければなりません。EORはこれらを遵守したスケジュール管理と給与計算を行います。
• 最低賃金と給与規範：イタリアには全国一律の最低賃金はなく、業界別の団体交渉協約による最低賃金が適用されます。従って、職種とレベルに合った最低賃金を支払う必要があります。給与は月次で正確に支払い、追跡可能な方法（銀行振込など）を取る必要があります。EORはこれらを確実に行います。
• 税金と社会保険料：イタリアでは、雇用者と従業員の双方に高額な税・社会保険料負担があります。雇用者は給与の約30％以上をINPSに負担し、従業員は約9～10％を給与から差し引かれます。所得税の累進課税も適用されます。適正な登録・計算・納付をEORが代行し、複雑さからあなたの負担を軽減します。
• 必須の福利厚生・休暇：イタリアは労働者保護の法律も充実して