共同雇用とは何ですか?
共同雇用
共同雇用は、通常クライアント企業とプロフェッショナル・エンプロイヤー・オーガニゼーション(PEO)の二者が、同じ労働者に対して雇用者の義務を共有する法的な仕組みです。PEOは共同雇用者として、特定の人事、給与、コンプライアンスの業務を担当します。一方、クライアント企業は従業員の日常業務や運営を管理します。
このモデルは、中小企業の間で採用が進んでいます。複雑な雇用義務をアウトソースし、人事に関するリスクを削減し、労働力管理を簡素化することを目的としています。
共同雇用の仕組み
共同雇用の基盤は、PEOとクライアント企業間の正式なクライアントサービス契約(CSA)です。この契約には、各当事者の責任と、共同雇用者としての役割が明記されています。
CSAの下で、PEOは「記録上の雇用主」となります。これは、給与処理、従業員福利厚生、税務申告、規制遵守などの業務を担当することを意味します。一方、クライアント企業は「職場の雇用主」として、職場運営、管理決定、職務記述書、パフォーマンス評価、懲戒手続きなどを管理します。
この二重の役割関係は、慎重な調整と信頼が必要です。両者は法的遵守、運営の整合性、従業員満足を確保しなければなりません。
共同雇用における責任分担
共同雇用モデルでは、PEOが労働力をコントロールするわけではありません。むしろ、戦略的な人事パートナーとして機能します。この仕組みにより、クライアント企業は一部の管理業務を委任しつつ、事業結果のコントロールを維持できます。
PEOが通常担当する業務:
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給与管理、賃金計算、給与支払い、給与税の申告
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福利厚生管理、健康保険プラン、401(k)、視力・歯科保険などへのアクセス提供
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規制遵守、労働法の監視、職場安全プログラム、差別禁止の施行
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労働者災害補償保険の管理と請求処理
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失業保険の管理
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懲戒処分、職場調査、リスク管理の支援
クライアント企業が責任を持つ業務:
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採用と候補者面接(PEOの指導の有無にかかわらず)
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日々の業務、プロジェクト、パフォーマンスの監督
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職務内容とスケジュールの設定
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従業員の生産性、エンゲージメント、組織文化の管理
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OSHA基準に準拠した安全な労働環境の提供
この役割分担により、それぞれの強みを活かすことが可能です。クライアントは事業のタスクを担当し、PEOは従業員を適切に雇用するための法的・管理的サポートを提供します。
共同雇用の主なメリット
共同雇用モデルは、特に専任の人事チームや法務支援を持たない企業にとって大きな利点があります。
まず、内部スタッフの管理負担を軽減します。給与、従業員福利厚生、コンプライアンスなどの業務をアウトソースすることで、企業は主要な事業活動に集中できます。PEOは高度なクラウド型人事ソフトウェアを利用して、書類の自動化と集中管理を行い、効率とアクセス性を向上させます。
次に、共同雇用は人材の獲得と維持の能力を高めることができます。PEOは、大規模な健康保険や退職金制度へのアクセスを提供し、多くの場合、小規模企業には高額すぎるこれらの福利厚生を利用可能にします。これにより、企業は求人市場で競争優位を得られます。
さらに、コンプライアンスリスクの軽減にも役立ちます。変化の激しい労働法、地域規制、従業員の分類に対する監視の強化に対し、PEOはコンプライアンスのパートナーとして機能します。これにより、法的罰則や罰金のリスクを低減できます。
最後に、従業員の分類、雇用契約、税務記録の一貫性を確保します。PEOは法的テンプレートや監査支援を提供し、IRSや労働省からの問い合わせに対応します。
法的区別:共同雇用とジョイント雇用
共同雇用とジョイント雇用、従業員リースの違いを理解することが重要です。ジョイント雇用では、二つの異なる雇用主が同じ労働力を管理します。これはしばしば正式な調整なしに行われ、賃金や労働時間の遵守に関する法的問題を引き起こすことがあります。こうした状況は、下請けやフランチャイズ関係で一般的です。
一方、共同雇用は、各当事者の役割を明確にした計画的かつ契約に基づく仕組みです。従業員リースは、人材派遣会社が一時的に労働者をクライアント企業に派遣する形態です。この仕組みは、共同雇用に見られる長期的な人事統合を欠いています。
もう一つの関連概念は記録上の雇用主(EOR)です。EORは給与、福利厚生、コンプライアンスを管理します。特に海外採用を支援し、外国の法的雇用主として機能します。PEOは通常国内で運営されますが、一部の企業はグローバルPEOやハイブリッドEORサービスも提供しています。
共同雇用におけるリスクとコンプライアンスの考慮点
共同雇用にはメリットがありますが、リスクも伴います。雇用主の役割について誤解があると、雇用法を遵守しない場合に責任を負う可能性があります。例えば、クライアント企業がPEOの適切な差別禁止手続きを経ずに従業員を解雇した場合、両者が不当解雇の訴訟を受けることがあります。
従業員の分類の誤りも問題です。従業員を契約者と誤って分類すると、IRSの監査や罰金につながる恐れがあります。これらのリスクを低減するために、企業はIRSに登録された認定PEO(CPEO)を選択すべきです。また、CSAにおいて責任範囲を明確に記録しておくことも重要です。
税務上の誤りもリスクの一つです。PEOは自社のEmployer Identification Number(EIN)で税金を申告します。賃金報告の誤りは、従業員の社会保障所得や税金還付に影響を及ぼす不一致を引き起こす可能性があります。雇用主は定期的に税務記録を確認し、申告内容を確かめる必要があります。
戦略的な共同雇用の活用例
スタートアップや小規模企業は、共同雇用を好みます。これにより、社内に専任の人事チームを持たずとも、フルサービスの人事サポートを受けられます。労働力を迅速に拡大しつつ、コストを予測可能に保つことができます。
中堅企業は、M&Aや新しい州への展開においてPEOの専門知識を活用できます。異なる地域での給与管理やコンプライアンス遵守を効率的に行えます。
建設、医療、製造などのリスクの高い業界では、共同雇用を採用することが多いです。これにより、職場の安全規制の遵守や労災保険の管理をより確実に行えます。
リモートワーク時代の共同雇用
リモートワークの普及により、柔軟な人事サービスモデルとしての共同雇用への関心が高まっています。PEOは、リモートファースト企業を効果的に支援できます。中央集約された書類管理、デジタルオンボーディング、多州のコンプライアンス、バーチャルHRツールなどを提供します。
しかし、海外にリモート従業員を抱える企業は、国内PEOだけでは対応できない場合があります。その場合は、EORやグローバルPEOの方が適していることもあります。これらは、法人格のない雇用、現地の税金源泉徴収、ビザの遵守を可能にします。
結論
共同雇用は、企業が労働力管理を簡素化し、より良い福利厚生を享受し、法的遵守を確実にするための賢くコスト効率の良い方法です。 プロフェッショナル・エンプロイヤー・オーガニゼーション(PEO)と提携することで、雇用義務を共有しつつ、チームのコントロールを維持できます。
このモデルは、特にスタートアップや成長企業にとって大きな価値をもたらします。ただし、適切なベンダー選定、法的確認、役割の明確な合意が必要です。共同雇用と類似の仕組みの違いを理解しておくことは、誤った分類や税務・法的問題を避けるために不可欠です。
働き方がハイブリッドチームや越境採用、柔軟な人事ソリューションへと進む中で、共同雇用は今後も企業の労働力管理において重要な役割を果たし続けるでしょう。
主要な人事・雇用用語の定義については、Rivermate Glossaryをご覧ください。